「結婚式の司会しました(最終章)」の巻
さて長々としたお話にお付き合い頂きまして、誠にありがとうございます。
それでは私の中で1番記憶に残る披露宴のお話を・・・。
新郎は前回と同じような私の大学時代の悪友である〇川。
彼は某大手旅行会社に就職し、福岡空港の某大手航空会社のグランドホステスを見て一目惚れ。
そこからアタックをかけて結婚まで漕ぎ着けたという行動派。
ちなみにどちらも頭に「J」の付く大きな会社ですが・・・(ここまで言えば分かりますね)。
新郎は長崎出身(当時横浜勤務)、新婦は福岡出身(在住)。
そこで「会場をどこにするのか?」といった話が出たそうだが、やはりそこはお互いの仕事柄。
共に旅行?(移動)のプロなので、交通の便が良い福岡で開催する運びとなった。
いつもの通り何度か会場との打ち合わせを行い、そして当日を迎えた。
私が披露宴開始をアナウンスし、ついに式が始まる。
先ずは新郎主賓のご挨拶。
流石は旅行代理店だけのことはある。
話の内容も、笑いをとりつつも締めるところは締め、堅過ぎず柔らか過ぎず最高のスタートを切る事が出来た(満足)。
続いて新婦主賓のご挨拶。
そして事件はここで起こった・・・。
新婦主賓が新婦の紹介を始める。
そしていきなり「新婦のイクヨさんは」と話し始めた。
私:「(あれっ、新婦の名前はイクヨだったっけ?)」
私:「(確かサチヨだったよな・・・、まあまだ誰も気付いてないみたいだからこのまま流そう・・・)」
と判断。
しかしそこから続く「イクヨ」の連呼。
流石に会場も気付き、若干ざわつきが・・・。
しかも話が長いため、「イクヨ」の回数の多い事多い事・・・。
友人たちが「どうにかしろ」というアイコンタクトさかんにを送ってくる。
ホテル側も「マズイ」と思ったのであろう、私の所へきて
「すいません、何とかこの状況を収めてくれないでしょうか・・・」
と懇願・・・。
流石の私も
「参った・・・、ど~しようか・・・・」
と、一瞬途方に暮れたものの、ある「友人しか知らない事実」が頭に浮かんだ。
それを言うか言わないか・・・。
言えば新郎新婦は救われる。
しかし新婦の主賓の立場がなくなる・・・。
時間が無い。
すぐに話が終わりそうだったので、迷わず実行することに。
そして新婦主賓の話が終わる・・・。
まばらに鳴る拍手・・・(そりゃ~誰だって戸惑いますよねぇ・・・)。
私も腹を決めて一言。
私:「主賓の〇〇様。温かいお話とエピソードを本当にありがとうございました」
私:「ところで、大変失礼なのですが新婦様のお名前は、イクヨではなくサチヨなのですが・・・」
参列者一同、「えっ、そんなこと言っていいの?」という雰囲気で会場が一気に凍りつく。
そして会場全員の目が私に集まる。
私の友人たちも「どうフォローするんだよ、おいおい・・・」といった視線を送ってくる。
全員の視線を一堂に浴び、そして私が話始める。
私:「私は学生時代を含めますと、新郎と10年くらいの付き合いになります」
私:「しかしながらその間、イクヨという名の女性と付き合ったという記憶はございません」
私:「皆様ど~かご安心下さい」
と。
一瞬の間を置き、湧き上がる大爆笑、そして割れんばかりの大拍手。
今まで固まっていた雰囲気がウソのように、一気に場が陰から陽に。
すぐにホテルの方が私のところに来られて、「本当にありがとうございました」と硬い握手まで。
ちなみにその後、新婦主賓がどうしたか私は知らない・・・(申し訳ございません)。
しかし、普通新婦の名前を間違うどアホ~はいないでしょう・・・。
初めて見た。
その後はすっかり場もほぐれ、何とか無事にお開きを迎える事が出来た。
以前にも書いたが「司会は機転だ」という典型的な例であり、一歩間違えばすべてをぶち壊す可能性のあった式であった。
たまたま今回だけは上手くいったが、今考えただけでも冷や汗が出てくる。
そういった意味でも一番私の記憶に残る披露宴でした・・・。
これまでの司会経験の中で、「良い司会とは」という事が多少分かったような気がする。
良い司会とは、「参列者の記憶に残らない司会(者)」という事。
つまりそれだけ何事も無く式がお開きを迎えた事を意味する。
司会者が記憶に残る場合は何らかのトラブルがあった場合や、司会者自身の力量不足(声が聞き取りづらい等)が挙げられる。
後日新郎新婦が新婚旅行から戻り、各親戚を訪ねたそうだ。
するとどの親戚からも「あの司会者は良かったねぇ」との話が出て大変盛り上がったそうな・・・(苦笑)。
いやはや、私もその頃はまだまだ司会者として力量不足だったんですねぇ・・・。
おあとがよろしいようで。
次回は
「銃砲所持許可証」の巻