「親父伝説」の巻
前回、親父の想いでを語った際にまだいろいろなエピソードがあったので続編を・・・。
友人Nと親父と待ち合わせた小料理屋。
実は随分昔から親父が利用していた小料理屋であった。
そこは女将さんと娘さんの二人で店をまわしていた。
小学生の時ちょくちょく連れていってもらっており、親父が飲んでいる隣でラーメンの出前を食べていた私・・・(どんな親子やねん・・・苦笑)。
その小学生の私から見ても、その娘さんは凄くキレイな人であった(本当に)。
話は前後するが、親父は公務員であった。
当時は今のように居酒屋などはほとんどなく、小料理屋で飲むのが普通であったみたいだ。
ということは必然的に会社?(公務員だけど)の飲み会もここになる。
そして、親父はよく部下を連れてここに来ていた。
部下と言えば当然若い。
その若い部下がそのキレイな娘さんを見るとどうなるか・・・。
まっ、今から40年くらい前(昭和50年)の頃の話とは言え、男と女の関係だけは変わりませんねぇ・・・(苦笑)。
公務員と小料理屋の娘さんとの恋!!(ロマンチックやなぁ~)
今の時代であれば何の問題もない話なのだが・・・。
しかし、当時はまだ
「公務員と飲み屋の娘が結婚するなんて(非常識だ!!)」
という考え方が蔓延していた、というより当たり前だった時代。
二人が付き合う(結婚する)事に対して、周囲の反対は凄まじかったらしい・・・。
そしてその二人が親父のところへ相談にやって来た。
話し合い?が行われたのは当時の実家だったので、幼心にも切迫した様子は伝わってきたのを憶えている・・・。
ドラマや映画ではないが、真剣に二人は「駆け落ち」までしようとしていたらしい・・・。
まあ気持ちは分かるが、
「流石にそれはマズイ!!」
と思って二人を止めた親父・・・。
まあここまでならよくある話?なのであるけれど・・・。
話を聞いたそ親父がその後、何をしたか・・・。
何と、単独で部下のご両親へ直談判にいくという暴挙に出たのであった(驚)!!
いやいや普通そこまでせんやろぉ~・・・、マジで~・・・。
当時の親父の年齢からしても、どぉ~考えても向こうの両親の方が歳が上!!
それに古い固定観念に縛られて生きてきた人生の先輩方に、よくもまあ説得に向かったもんだ。
流石に最初はけんもほろろに追い返されたらしい・・・(そりゃそ~だ)。
それでも何度も通ったとの事・・・。
自分がカミさんをもらうのに反対されて、ご両親のところへ通うのは分かるけど・・・。
部下のためとは言え、ここまでするかぁ~~~(でもナイスだぜ親父!!)
結局その情熱(しつこさ?)に先方が負けたらしい・・・(笑)。
結局しぶしぶながらも、二人の結婚を認めてくれた・・・。
もちろん結婚式の仲人はうちの両親なのだが・・・。
しかしなぁ・・・、1つの疑問が・・・。
いったいどうやって説得したのだろう・・・。
今となっては謎?である・・・(苦笑)。
それから二人は毎年「お中元」と「お歳暮」の時期になると欠かさず手土産を持ってご挨拶に来てくれた。
昔はそういう事が当たり前のように行われていたんですね・・・。
まあお菓子が来るので、子供としては大変嬉しかったのだけれど・・・。
当時の私の心中として、その旦那の方を
「キレイなお姉さんを奪った、ひどい奴」
として、マジに敵視していたのを憶えている・・・(どんな子供や・・・爆)。
他にももう1つ。
これも私が小学生くらいの頃だったのだが・・・。
ある日曜日の事。
いきなり玄関のチャイムが鳴った・・・。
そこで私が出てみると・・・。
そこに居たのは親父の部下(結婚騒ぎとは別の人)。
何故分かったかというと、当時は上司の家で宴会するというパターンも多かったので、それで顔を憶えていた次第。
当時の実家は結構田舎の方にあったので、てっきり山登りでもした帰り道にでも寄ったのかと思った(たまにそういう部下がいた)。
その割には全然山登りの風体は感じられない・・・。
Tシャツにズボンという至って普通の格好・・・。
そうこうしているうちに、親父が登場。
するとその部下が開口一番、
「かっ、係長・・・、メ、メシ食わせて下さい・・・!!」
と必死の形相で懇願するではないか・・・。
これには家族一同笑ってしまったのだが・・・(いやいや・・・、失礼)。
よくよく聞けば、この部下・・・。
給料前なのに全部お金を使ってしまったらしい・・・。
当時は今みたいに気軽にお金をキャッシング出来なかった。
なので、極端な話
「お金が尽きる=生活(命)に関わる」
という今ではとても考えられないような状況に陥る。
では
「知人にでも借りればいいだろう!!」
という方もいるだろうが、お金を借りることは罪悪だと思われていた当時の事。
そう簡単にはいかなかったようだ・・・。
話を戻そう・・・。
そうやってわざわざ訪ねてきた部下を見放すような親父ではない・・・。
先ずは存分にメシを食べさせてあげる・・・。
そうしているうちに1つの疑問が・・・。
先程も話したように、当時の実家は結構田舎の方にある。
ではこの部下はどうやってここまで来たのか?
そこに気付いた親父、早速聞いてみた。
すると、
「・・・自転車で来ました・・・」
と、ポツリ一言・・・。
普通なら、「ああそうか」と思うだろう・・・。
しかしよくよく考えてみると、その部下の家から私の実家までゆうに20kmは離れている!!
それに当時の重くて変速機のついていない自転車とくれば・・・。
よくもまあそこまでしてうちまで来たもんだと感心(呆れた)したもんだ・・・。
そして食事も一段落して飲み会に。
自然と話題はお金の話に・・・。
親父:「そういえば、どうしてお金を使い果たしてしまったんだ?」
部下:「いえっ、あのぉ~・・・、そのぉ~・・・。」
親父:「ハッキリ言わんかぁ~!!」
部下:「・・・実は、ギャンブルで全部スッてしまって・・・。」
約2秒程間があって・・・。
親父:「バカモーーーーン!!いったい何考えてんだぁーーーー(怒)」
と、烈火のごとく怒り大爆発!!
当然、そこから始まる説教タ~イム!!
私ら家族はその場から即避難・・・(苦笑)。
さてさて、そこからの後日談(ここからが親父の本領)。
金遣いの荒い部下。
当時の給料は銀行振込ではなく、手渡し・・・。
親父は直属上司・・・。
ということから何をしたか・・・。
親父が勝手に部下名義で通帳を作成!!(今ではとても無理だが・・・)。
直接手渡すことをいい事に、勝手に給料袋を開ける(今だと立派な犯罪)。
そして3分の1を強制徴収し、その通帳へ入金。
もちろんそのお金は親父が管理!!
って、親子じゃあるまいし・・・(普通、親子でもここまでしない)
まあ時代が時代だったから出来たんでしょうねぇ~・・・。
しかしその部下もよくそれに従ったもんだ・・・(笑)。
因みに余談であるが・・・。
部下の両親からは泣いて感謝されたらしい・・・(笑えるが笑えん)。
その親御さんもギャンブル癖には手を焼いていたとのこと。
では何で親の言うことは聞かずに、親父の言うことを聞いたかって?
詳しい理由は分からない。
ただ親父は「悪役商会」に登録されても可笑しくない容貌をしてたのは事実・・・(笑)。
あとはご想像にお任せします・・・。
それから数年して。
その部下が結婚する事に。
その時も部下から仲人をお願いされたそうな・・・(まあそ~なるでしょう)。
えっ、貯金はどうなったかって?
もちろんその貯金はきちんと渡したそうな・・・。
でも渡したのは部下にではなく、奥さんの方にだけれどね・・・(笑)。
まあこんなエピソードも時代がなせるワザだったんだろうけど・・・。
しかし・・・、やってくれるぜ親父ぃ~!!
まだまだ親父を超える日は遠そうだな・・・(苦笑)
おあとがよろしいようで。
次回は
「お寺で寄席しました」の巻