「モデル?しました(させられました)」の巻
私が大学時代に落語研究会にいたことは以前お話しました。
落研というサークルの性格上?いろいろなバイト話が舞い込んでくる。
どちらかというと「長期型」というよりは、1回限りの「単発型」がほとんど。
そこでその時依頼のあったバイトが、
「ブライダルショーの始まる前に、漫才みたいなのをやって欲しい」と、いったもの。
まあこの手の依頼は多い。
「それで1万円なら良いじゃない!!」
と軽い気持ちで引き受けた(今回は私が出るわけではないため)。
そして当日。
3人行けば十分なのだが、女性部員(一応落研にも女性部員はいた)達が
「絶対に見たい」というので、総勢6名程で会場へ(まあ女性の気持ちも分かります)。
ショーの前の漫才?も無事終わり、いよいよ気楽な気持ちで会場の隅の方に座っていた。
するとそこにマネージャーらしき人が慌てた感じでやってきた。
一同「なんだろう?」と思いつつマネージャーを見る。
するとマネージャーがいきなり私を指差し、
「君、ちょっと一緒に来てくれないか」と一言。
訳が分からないまま、マネージャーに連れて行かれた私・・・。
そして事務所でメモ?のようなものを渡され、
「3回の〇〇という部屋へ行ってください」と言われる。
私は、「何だ、使いっぱしりかよ・・・。後輩もいたのに何で俺が・・・」
とブツブツ言いながら指定された部屋へ。
すると待ち受けていたおばさん、いや女性が暫くジッと私を見た。
そして、分かったとばかりに「すぐにこれを持って2階の〇〇へ行って」と言われ、渡されたのは紋付袴。
「何だよ、また移動かよ・・・。こんな着物運ぶだけなら誰でもいいのに・・・」
と、ここでもまたブツブツ言いつつ移動・・・。
そして2階の部屋へ到着。
開けた瞬間、中から慌しい雰囲気を感じると共に、響き渡る怒声(というか確認しあっているみたいな・・・)。
一瞬、「あれっ、部屋間違えたかな?」と不安になる私。
すると私に気付いた一人の女性が
「君、何してるの?何か用?」と面倒くさそうに話しかけてきた。
ハッと我に返った私。
「実はこれを持ってこちらの部屋へ来るように言われたのですが・・・。」
するとその女性、
「何やってたのよ、遅いわねぇ~。さっさと仕度するからこっち来て」と、言う・・・。
私:「(・・・・・。なん、何なんだ・・・・・・)??????」
そしてそのまま訳も分からず、控え室のような所へ・・・。
女性:「じゃあ~脱いで」
私:「え~っ・・・」
女性:「何やってんの、脱がなきゃ着替えられないでしょ!!」
私:「きっ、着替えるぅ~~~~??」
女性:「あなた今日の男性モデルさんでしょ。時間がないんだから早くしてよ」
ここに至って、少し内容が見えてきた私。
要は今日来るはずの男性モデルが来ていないため、急遽私がピンチヒッターとして選ばれたらしい・・・。
下着一枚になり、紋付はかまを着せられる・・・。
顔にベタベタとドーランのようなものを塗られる・・・。
なすがまま・・・・。
そうこうしているうちに、準備完了。
女性:「今はメガネかけてていいけど、本番では外してね」
と念を押される。
そしてステージ近くの控え室のようなところで一通り説明を受ける。
マネージャー:「舞台の通路を白無垢の女性と一緒に歩いていって、先端で一旦止まって礼をして下さい。そしてその場でクルリと一周して戻ってくれば終わりです」
まあ簡単に言ってくれると思いつつも、
「歩くだけなら別にいいや」と覚悟を決める。
出番までまだ時間があったため、ショーを終えたウエディング姿の女性たちが私と同じ控え室へ帰ってくる。
そしていきなりドレスを脱ぎ出し、着替えを始めた。
しかも下着姿で周りを気にする風でもなく、本当に堂々と・・・。
これには相当ビックリした。
しかも当時大学生だった私には刺激が強すぎた・・・。
「(ぬわぁ・・・・、うぉぉ・・・・)」と、声にならない叫びが・・・。
そしてその光景を直視出来ない私・・・。
あ~、あの頃は若かった・・・(苦笑)。
そして出番がやってきたが、まあ何とか無事に切り抜けて一安心。
着替えをして、後輩達が待つ場所へ。
すると後輩が
後輩:「先輩、いったいどこに行ってたんですか?さっき男性モデルで先輩そっくりな人が出てましたよ。」
私:「それ、俺だし・・・」
後輩:「はっはっはっ、先輩冗談上手すぎですよ」
私:「マジに俺なんだけど・・・」
と、ドーランの塗り後を見せる。
後輩一同:「え~っ・・・。」(一瞬の間があり)
後輩一同:「ぎゃぁ~っはっはっはっ」(大爆笑)
かくして、私のモデルデビューは爆笑の渦と共に終わったのでした。
その後、マネージャーから出演依頼のバイト料をもらいこの日は無事終了。
ちなみにこの金額の中に「モデル料」は含まれておりませんでした・・・。
最後に、「舞台裏」という言葉をよく聞きますが、本当に慌しさと殺気が渦巻いているんだという事を身をもって体験。
それ以降は何でも「ショー」が付くものをみると、「本当にお疲れ様です」という気持ちが沸いて来る様になりました。
まあ何れにせよ、二度とやるつもりはないんですけどね・・・(苦笑)。
おあとがよろしいようで。
次回は
「結婚式の司会やりました」の巻